ページの先頭です。 メニューを飛ばして本文へ
トップページ > 平成30年度 リーダー養成セミナー 「仲間・部下に寄り添うリーダーとは?」

平成30年度 リーダー養成セミナー 「仲間・部下に寄り添うリーダーとは?」

印刷用ページを表示する 掲載日:2020年4月1日更新

第1・2回  9月21日(金曜日)
リーダーのための「チームづくり」~メンバーの力を活かすファシリテーション入門~

                                         講師:九州大学大学院総合新領学府客員准教授
                                             NPO法人日本ファシリテーション協会フェロー 加留部貴行 さん

 今年度のリーダー養成セミナーでは「仲間・部下に寄り添うリーダーとは?」をメインテーマとして開講しました。初回は、変化や非常事態にも対応できる強いチームをつくるために、それぞれの個性や特技を発揮できるチームのあり方について学びました。
 はじめに、グループごとのワークとゲームを通してチームの力について考えました。まず、自分がこれまでに経験したよかったチーム、つまらなかったチームの思い出を書き出し、良いチーム作りで挙がった項目は自分自身意識して行動しているか振り返りました。
 つぎに、みんなで輪になりフラフープを人差し指だけで支えながら下に降ろす「ヘリウムリング」と、限られた枚数のA4用紙で、道具は使わずに出来るだけ高いタワーを作る「ペーパータワー」という2つのゲームを行いました。このゲームを通じて、グループがチームになっていく上で必要とされるタックマンモデルという理論を現実に体験することができます。ゲームを通じて自分の職場で起こりうることやリーダーとして必要なことは何かなど、感じたことをグループで議論し、学びを深めました。
 多様化、複雑化する課題に個人で対応するのは限界があります。チームで対応すれば、自分の経験以外のことを知ることができて視野が広がり、誰かと話すことで答えが導き出せるなど、多種多様な人たちが自分の得意分野を出して課題に取り組むことができます。そのためにはチームや組織の中で対話を通じた関係づくりが必要になってきます。意見を出し合い、話を聴くということはメンバー同士の関係構築と相互理解を図るということであり、リーダーには対話を通じた、場づくり・関係づくりが求められます。リーダーとなる人はファシリテーター(支援者、促進者)として、チームの中の意見を引き出したり、聴き出したりすることで、議論をしやすい環境作りを担う必要があります。そして、リーダーは人を引っ張るだけではなく、意識して自分を良い状態にし、自分をリードすることも周りに良い影響を与えるリーダーシップに繋がっていくのです。チームづくりの基本を学べた充実した時間となりました。

受講者の声

 ◆会社の中で対話が少なかったりしてコミュニケーション不足だと感じていたので、大変ためになりました。社内の管理職の人達にも今日学んだことを共有したいと思います。

 ◆「意識する」ことの大事さを学びました。なりたいようになるということなので、なりたい自分を目指して頑張りたいと思います。

第3・4回 10月4日(木曜日)
リーダーのための「問題解決力」~建設的な議論のために~

                         講師:サイボウズ株式会社 カスタマー本部、ローカルブランディング部 部長 久保 正明さん

 第3回・第4回の講座は、働き方やチームワークに定評のあるサイボウズ株式会社の久保正明さんを講師に招き、サイボウズ独自の取り組みについてお話を伺いました。
 サイボウズ株式会社は、松山市で生まれたグループウェア(情報共有ソフト)の開発、販売、運用を行う会社です。創業当初のサイボウズは、残業や土日出社はあたり前といったハードな労働環境のため、社員がついていけず離職率が28%にまで上がってしまうという事態に陥りました。しかしその後、働き方改革を進め「100人いれば100通りの働き方があってよい」という方針のもと、働く時間や場所を自分で選べるようにしたり、自由に副業できるようにしたりといった施策を行い、働き方の多様化へのチャレンジを実施し続けました。その結果、離職率は7分の1に下がり、働き方改革の先進企業と呼ばれるまでになりました。
 サイボウズには「公明正大」と「自立」という二つの風土があります。嘘をつかず情報を隠さず、上司にすべてを委ねるのではなく自分で責任を持って行動するという意味で、建設的な議論のための手段として生み出されたのが「サイボウズ式問題解決メソッド」です。
 この問題解決メソッドを使い、実際にグループワークを行いました。
 まず、自分の心にモヤモヤしている「問題」を発見しタイトルをつけます。ここで気をつけることは、問題自体は良くも悪くもないということです。理想があるから問題が生まれるため、問題とは「理想と現実のギャップ(差)」を指します。そのギャップを埋めるために問題解決メソッドを使って問題を見つめ直していきます。
 次に「問題」を「事実と解釈」に分けます。同じ事実でも、人によって解釈が違うため事実に注目して、解決すべき問題を整理していきます。
 そして問題を「理想」と「現実」に分解し、「理想と現実」をさらに「事実と解釈」に分解します。分解して考えると漠然としたものがクリアに見えてきます。そこから「原因」の検討です。原因は「Aさんが〇〇しなかった」というように、現実の事実を引き起こした「人の行動」に設定すると課題設定しやすくなります。
 最終的に、出した原因にコストと効果を踏まえて優先順位をつけていき、現実を理想に近づけるための具体的な課題を設定します。課題は「誰が実行するのか」を明確にし、出来るだけ自分ができることを設定します。「問題を深めていくと、周りの影響よりも自分自身の課題に気づくことが多い。自分の理想を思い返して、問題を整理しながらいろいろな場面で使ってほしい。」と講師は述べられました。
 具体的な問題解決方法を学んだことで、自身の仕事や普段の生活の問題への取り組み方にヒントを得た受講生が多かったようです。

受講者の声

 ◆問題解決メソッドにより、理想を現実にするための課題が明確になり、頭が整理できてすっきりしました。今後も意識しながら活用していきたいと思います。

 ◆なぜ問題が発生するのか(理想と現実の差)が明確に分かったので問題に対しての考え方がグッと楽になりました。会社でも共有したいです。

第5・6回  10月18日(木曜日)
リーダーのための「面談技法」~部下や仲間を導く~                講師:岡山理科大学 副学長・教授 秦 敬治さん

 第5・6回の講座は、日常の業務や職場の面談などで部下や仲間の悩みを聞いたり、やる気を出させて目標に導いたりするためのリーダーとしての働きかけ方やあるべき姿について学びました。
 組織において、過干渉、過保護、放任のうち、最もメンバーや構成員が育たないやり方は過干渉と放任です。組織型過干渉とは無計画な人事異動や生きたくない研修に行かせることなどで、組織型放任はメンバーが何が得意で将来どうなりたいと思っているか、人生で何を優先しているかを全く知らない、知ろうともしないことを指します。
 過保護とは甘やかすことではなく、組織型過保護といい、自分のやりたいこと、自分の得意なこと、自分の専門性を活かせるような環境を整えることを指します。
 チームのメンバーのことを知るには信頼関係が必要です。信頼関係を築くにはコミュニケーションの質が重要になってきます。コミュニケーションを図る面談方法のコツとしては 1安心安全な場所づくり 2面談目的の明確化 3指摘するのではなく、相手から聞きたい・話してもらいたいことを相手に話してもらうためのサポートをする 4相手の要望も聞き入れる 5最後に振り返りを行い、本日の面談の確認をする。以上の5つです。
 1990年代以降、人財育成の一環として計画的に職員間にメンターとメンティーのペアを作り、メンタリングを行う制度が広がっています。メンタリングとは1対1の関係でメンターがメンティーに対して行う指導や助言などのコミュニケーション全般のことです。メンターの一番の役割は「想い」や「能力」を引き出す(気付かせる)」ことです。
 このメンタリングを活用することで、相手の能力を引き出し、自ら動きたくなる気持ちを起こさせることで良い職場環境づくりに繋がっていきます。
 具体的な面談方法を学び、実践を行ったことで職場での信頼関係の築き方にヒントを得た受講生が多かったようです。

受講者の声

 ◆仕事だけでなく、子育てや夫婦など家庭でも活かせる内容でとても勉強になりました。ペアで実際に話しながら体験できたので、気づきが深い時間になりました。

 ◆面談の進め方やもやもやしていた点に少し答えが見えました。ワークショップも楽しくてとてもよかったです。ぜひ社内でも実践していきたいと思います。

第7回  11月1日(木曜日) オープンカレッジ
リーダーのための「時事問題」~誰もが安心して就業できる職場づくりとは?~

                       講師:独立行政法人 国立病院機構 四国がんセンター 臨床研究推進部長 青儀 健二郎さん
                       講師:前株式会社 明屋書店 代表取締役、元気ファクトリー 代表 小島 俊一さん
                       講師:NPO法人愛媛がんサポート おれんじの会 理事長 松本 陽子さん

 最終回の講座は、受講登録されてない方も受講可能なオープンカレッジ方式でがんになった社員が安心して働き続けるための支援のあり方について取り上げました。県内企業や医療機関の取り組み事例を学び、リーダーとして取り組むべき職場環境について考えました。
 愛媛がんサポートおれんじの会の松本さんは、ご自身の体験と「就労、雇用継続の周りの理解が得られないことが大変だった。」というがん患者が非常に多いことを挙げ、がん患者の就労支援についての理解が社会に求められていると説明されました。
 四国がんセンターの青儀さんは、「全体でみると癌の6割は治るが、がん患者は診断後に約1/3から1/4の方が退職している」とデータを示し、社会の理解が進んでいない現状が、がん患者と仕事の両立を困難にしている問題を指摘されました。あわせてがんの診断を受けた人々がその後の生活で抱える身体的・心理的・社会的な様々な課題を社会全体が協力して克服していくという概念『がんサバイバーシップ』の重要性を訴えられました。
 明屋書店の前代表取締役の小島さんは、自身が取り組んできた企業経営について「従業員を財産として守る。人を大切にする経営姿勢は従業員のモチベーションを上げ業績にもつながる。」と話され、四国がんセンターと協働でオリジナルの「がん患者の就労支援の研修プログラム」を作成したことを紹介いただきました。
 これらの話を受け後半は、“職場でがんになった従業員がいたときリーダーとしてどう対応するか”を考えるグループワークを行いました。参加者からは「継続的にサポートしていける職場づくりに取り組む」「長期的・短期的に休める勤務体制が必要」などの意見が出ました。
 総評として小島さんは、「がんと闘うのではなく、がんと共に生きる社会であることが大切。目の前の人を大切にし、多様性を認める寛容な社会でありたい。がんや疾病に限らず、誰もが働きやすい職場づくりに取り組んでほしい。」とまとめられました。

受講者の声

 ◆疾病を患ったスタッフも含めいかに職員を大切にするのかを考えることができた。病気の有無に限らず働きやすい環境を考えていくことの必要性を改めて感じました。

 ◆今回はがんの話でしたが、その他の疾病やそれぞれの事情(育児・出産・介護等)に寄り添っていける職場づくりができるのが理想だと思いました。